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京劇徹底!解剖(楊家将演義)

穆柯寨(ぼくかさい)

楊家将演義(ようかしょうえんぎ)の一節。穆桂英(ぼくけいえい)は後に楊宗保(ようそうほ)と結婚し楊家の一員としても活躍します。
(ストーリー)
敵対する遼(りょう)の魔力を持つ布陣「天門」を破るためには降竜木(こうりゅうぼく)で作った斧が必要です。総大将である楊延昭(ようえんしょう)は焦賛(しょうさん)と孟良(もうりょう)に命じて、穆柯寨(ぼくかさい)の地に生えている降竜木を取りに行かせました。二人はその地で穆柯寨の領主の娘・穆桂英が猟を楽しんでいるのに出会いますが、突然領地に入って来たことと猟の獲物をめぐって争いになってしまいます。穆桂英は女性ながら武術の達人で、豪傑である焦賛と孟良は打ち負かされ追い出されます。二人は楊延昭の息子・楊宗保に助けを求めましたが、楊宗保も穆桂英にかなわず彼女に捕まってしまいます。焦賛と孟良は山に火を放って穆桂英を火攻めにしようとしましたが、穆桂英の火攻め返しで逆に撃退されてしまいました。

穆桂英(ぼくけいえい)
穆桂英画像

穆柯寨の領主の娘。武人としての心得があり、度重なる戦で楊家の男達がみな倒れたのち、兵を率いて出陣し国を守りぬきます。彼女のきらびやかな甲冑を模した衣装は「女大靠(じょだいこう)」といい、女武将や女元帥の戦闘衣装です。頭の羽飾りはキジの羽でできた「リンズ」というもので、武将の凛々しさ、雄雄しさを表しています。

坐宮(ざきゅう)

楊家将の番外編ともいえる物語。百年以上にわたり多くの名優によって演じられ続け、今でも北京で最も愛されている演目の一つです。
(ストーリー)
宋と遼の金砂灘での会戦で宋の将軍・楊延輝(ようえんき)こと楊四郎は、武運つたなく敵国の遼の捕虜になりました。彼は姓名を木易(=楊)と名乗り正体を隠したまま、遼を治める簫太后(しょうたいごう)の娘鉄鏡公主(てっきょうこうしゅ)と結婚します。その十五年後、楊四郎の母・余太君が楊家の一族郎党を率いて遼に戦いを挑んできました。四郎は母親に会いたいと思い悩み、それを察した妻に問われるまま自分の正体を打ち明けます。鉄鏡公主はとても驚きますが、夫のために簫太后のところから通行証となる令箭国境の通行許可証を盗み出すことを約束するのでした。

楊延輝(ようえんき)
楊延輝画像

楊家の四番目の息子。若く有能な武将でしたが、戦で敵国・遼の捕虜となり、本来の姓である楊の字を二つにわけ「木易」と名乗り正体を隠したまま鉄鏡公主と結婚します。冠とセットの赤い飾りと衣装は身分の高い姫君の入り婿であることを意味し、頭につけたキジの羽と後ろに垂らした白い毛皮はその姫君が異民族であることを表しています。

鉄鏡公主(てっきょうこうしゅ)
鉄鏡公主画像

遼の簫太后の娘。女性ながら武勇の誉れ高く、戦の際には軍を率いて戦い自らの手で捕虜にした宋の武将・楊延輝と恋に落ち結婚します。楊延輝との間には息子が一人います。こよなく夫と息子を愛する妻であり、気転が利く賢い女性です。衣装と「両把頭」という髪型は満州族のもので、特に坐宮での牡丹の花の髪型は彼女のシンボルです。

三岔口(さんちゃこう)

楊家将演義(ようかしょうえんぎ)の一節。明るい照明の舞台で見せる闇の中での立回りが見どころです。
(ストーリー)
将軍・楊延昭の部下焦賛(しょうさん)は義憤にかられて奸臣を殺害したために流刑になります。奸臣の一派により流刑の途中で焦賛が暗殺されることを心配した楊延昭は、部下の任堂恵(にんどうけい)に、ひそかに焦賛の身を守るよう命令します。焦賛が泊まっている宿屋の主人・劉利華(りゅうりか)は義に厚く焦賛をなんとか助けたいと考えていました。そこへ任堂恵が到着します。劉利華は任堂恵が焦賛を殺しにきた者だと誤解し、深夜刀を抜いて任の部屋に忍び込みます。二人は闇の中で格闘をくりひろげますが、激しい戦いの音に起きだした劉の妻と焦賛が灯火を持ってあらわれ、実はみな仲間だったことが分かります。

任堂恵(にんどうけい)
任堂恵画像

楊家に仕える武将。戦場では一軍を率いて戦いますが、三岔口では楊家の総大将・楊延昭の命で友人でもある焦賛の救出に向かう人物を演じます。三岔口では旅の侠客の姿で登場しますが、その歩き方や身のこなしは侠客のものではなく武将の風格を漂わせています。顔の横にぶらさがる玉のようなものは闘魂の象徴であると言われています。

劉利華(りゅうりか)
劉利華画像

三叉路に面した場所で妻と一緒にしがない宿屋を経営して暮らす主人。かねてから焦賛の武勇を慕い、また楊家に恩義があることから、どうにかして焦賛を助たいと思っています。衣装にある蝶の模様は彼が蝶のように軽やかで身軽であることを表しています。また、顔の中央だけを白く塗るメイクは「小花臉」といい、「武丑」の役柄の特徴です。

打焦賛(だしょうさん)

楊家将演義(ようかしょうえんぎ)の一節。コメディタッチの軽快な台詞回しとオーバーアクションな立ち回りが見どころです。
(ストーリー)
楊排風は天波府の楊家の女主人に仕える侍女ですが日頃から武術の訓練に余念がありませんでした。ある日戦陣からの援軍の要請があり、志願した楊排風は楊家の武将・孟良(もうりょう)とともに楊家の女主人のもとを出発し三関に赴きます。豪傑の焦賛(しょうさん)は楊排風を小娘と侮ります。そこで孟良は楊排風をけしかけ焦賛と「棍」(武具の一種)を使って試合をさせることにしました。楊排風は見事な腕前を発揮し焦賛をさんざんに打ち負かします。その後、楊家の大将・楊延昭は、出陣にあたって陣容を発表し、楊排風を出撃させました。その結果楊排風は見事に敵の韓昌を打ち取り、捕われていた楊宗保を救出しました。

楊排風(ようはいふう)
楊排風画像

楊家の総大将・楊延昭の本国の屋敷で楊延昭の母・余太君に仕え炊事係をつとめていた少女。楊家の武将・焦賛との棒術の試合に勝利した彼女は楊延昭に認められ出陣し見事に敵の武将・韓昌を討ち取ります。うら若き乙女でありながら立ち回りに秀でた彼女の衣装は、身軽に動き回ることに重心をおいており軽快な印象です。

(2006年3月号掲載)

楊家将演義 三国志演義 その他

(楊家将演義)
「穆柯寨」
穆桂英
「坐宮」
楊延輝 / 鉄鏡公主
「三岔口」
任堂恵 / 劉利華
「打焦賛」
楊排風

(三国志演義)
「長坂坡」
趙雲
「古城会」
関羽 / 張飛
「郡英会」
周瑜
「甘露寺」
劉備

(その他)
「覇王別姫」
虞姫 / 項羽
「鬧天宮」
孫悟空 / 那咤
「貴妃酔酒」
楊貴妃

京劇まめ知識(1)

「楊家将演義(ようかしょうえんぎ)」
明代に成立した長編小説で、楊家の将軍たちが宋の国を守って遼からの侵攻を迎え撃ち果敢に戦う姿を描いている。小説としての完成度が低いためか日本では楊家将の物語はほとんど知られていないが、中国では昔から「三国志」「水滸伝」などと共に絶大な人気を誇り、京劇などの芝居を通じて広く知られている。数年前、中国山西電視台が作った連続ドラマ「楊家将」は日本でもBS2で放映された。小説の邦訳は存在していないが、北方謙三による翻案「楊家将」がある。

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